2019-11-05
科学技術分野のアカデミー賞と称され、過去1年間に実用化された最も優れた製品・技術を100件選出して表彰する米「R&D 100 Award」が発表され、経済部(日本の経済産業省に相当)技術処が実施する「科技専案計画(科学技術プロジェクト)」に参加する財団法人工業技術研究院(工研院、ITRI)、財団法人資訊工業策進会(III)、金属工業研究発展中心、財団法人紡織産業総合研究所の4つの政府系研究機関、5項目の技術が受賞した。
「科技専案計画(科学技術プロジェクト)」に参加し、「R&D 100 Award」を受賞した台湾の技術は、工業技術研究院の「RAIBA – Reconfigurable and Regulatable Battery Array System(=再構成と調整が可能なバッテリーアレイシステム)」と磁性ビーズ製造技術「iKNOBEADS」、財団法人資訊工業策進会の「Digital Twin Solutions for Smart Farming(スマート農業のためのデジタルツインソリューション)」、財団法人紡織産業総合研究所のエアジェット織機「DIFA(Distance Fabric)」、金属工業研究発展中心の無人搬送車「Bionic Intelligent AGV Fleet System」で、それぞれ国立台湾大学医学院附設医院(=病院)、致茂電子(Chroma)、台塩緑能、アパレルの秀平公司などの医療施設や民間企業と協力し、プロジェクト成果の商用化を目指している。
スイス・ジュネーブに本部を置く世界経済フォーラム(WEF)は、各国の競争力を格付けする『世界競争力ランキング』で、台湾を世界四大「super innovators(スーパー・イノベーター)」の1つに挙げた。台湾の政府系研究機関は、政府が実施する「科技専案計画(科学技術プロジェクト)」の支援を受け、その技術革新能力で産業の持続可能な発展を推進し、台湾の各産業や国家の競争力を押し上げている。2018年、このプロジェクトによって創出された民間企業による投資額は577億台湾元(約2,060億日本円)に達した。政府がこのプロジェクトで投入した経費1台湾元(約3.5日本円)に対して、4.39台湾元(約15日本円)の投資効果が生まれた計算になる。また、現在までにこのプロジェクトによって生まれた特許や移転可能な技術は3万件近くに達しており、企業のR&Dニーズを十分に満たしている。
このプロジェクトから生まれた新たな技術は、12年間連続で「R&D 100 Award」を受賞している。過去12年間で同賞を受賞した技術は53項目。そのうち9割以上が、多国籍企業や台湾の企業に移転されている。また、受賞した新技術をもってスピンオフしたスタートアップ企業も多く、こうしたスタートアップが新技術の商用化を実現している。
今年「R&D 100 Award」を受賞した工業技術研究院の「RAIBA – Reconfigurable and Regulatable Battery Array System(=再構成と調整が可能なバッテリーアレイシステム)」は、AI(人工知能)を使用してバッテリーモジュールの放電負荷を制御し、新旧モジュールのストレージシステムを統合する技術。今後電動車両(EV)の急増によって生まれるバッテリーモジュールの淘汰という問題を解決し、資源の再利用と再生可能エネルギーによるビジネスチャンスを生み出すことができると期待されている。
また、工業技術研究院の磁性ビーズ製造技術「iKNOBEADS」は世界初の独自開発技術で、すでに国立台湾大学医学院附設医院(=病院)と同時に実証実験を行っている。免疫機能を持つT細胞を効果的に活性化させることができるという新技術で、「プレシジョン・メディシン(精密医療)」に新たなビジネスチャンスをもたらすもの。2020年にGMP(適正製造基準)をクリアした臨床用商品が誕生し、がん治療の新たな救世主になることが期待されている。
財団法人資訊工業策進会の「Digital Twin Solutions for Smart Farming(スマート農業のためのデジタルツインソリューション)」は、農家がこれまでの経験と現場での観察に基づいて、設備パラメータを設定することができ、さらにはパラメータを変更する前のシミュレーションを実行して、最適な判断を下すことができるというもの。デジタルツインソリューションにおいては、AI(人工知能)技術が農家の経験や知識を把握し、共同作業の実現、意思決定の最適化を支援する。
財団法人紡織産業総合研究所の「DIFA(Distance Fabric)」は、世界唯一の非等高、高間隔のエアジェット織機。現在市場に出回っている織機の限界をクリアし、高間隔、高密度の3D立体構造繊維を作り出すことを実現した。用途は広く、救命ボート、ジャッキ、緩衝材などに使える。台湾企業による高付加価値産業用アパレル市場への進出を有利にするもの。
金属工業研究発展中心の無人搬送車「Bionic Intelligent AGV Fleet System」は、アリがものを運ぶときのロジックを模倣したもので、動力モジュール、プラットフォーム、スマート化されたシミュレーション指揮システムを統合したソリューション。同時にワイヤレスインテリジェントシステム、柔軟な運用、小回りの利く移動という3つの特徴を持ち、複数台のAGV(無人搬送車)を同時に制御し、輸送タスクを実行することができる。未来のスマート化された運搬モデルを実現したもの。
米「R&D 100 Award」の主催は今年、米R&Dマガジン社からメディアグループのWTWHに変更した。また、R&Dマガジン社が発行する技術情報誌『R&D Magazine』も『R&D World』と改名した。科学技術分野における権威ある賞で、毎年全世界の1,000点以上の新技術の中から、重大な意義を持つ、あるいは人類の生活に大きな影響を与える商品化可能な技術を選び、表彰している。今年で58回目を迎え、新技術を鑑定するための重要なメルクマールとなっている。
Sources:Taiwan Today;2019年11月05日
資料來源: 経済部技術処
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